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大阪高等裁判所 昭和43年(行タ)8号 決定 1968年12月14日

申立人 株式会社 日和橋倉庫

相手方 大阪国税局長

訴訟代理人 北谷健一 外三名

主文

相手方が申立人に対し、昭和四三年八月二八日別紙目録記載の債権を差押えてした滞納処分(ただし、昭和四二年度法人税の滞納にかかる分を除く。)は、当裁判所昭和四一年(行コ)第一一三号法人税等更正決定等取消請求控訴事件の判決が確定するに至るまで、その手続の続行を停止する。

申立費用は、相手方の負担とする。

理由

一  当裁判所に係属する昭和四一年(行コ)第一一三号法人税等更正決定等取消請求控訴事件において、申立人(控訴人)は、相手方及港税務署長(共に被控訴人)に対し、港税務署長が昭和三七年八月一日付でした申立人の昭和三五年一〇月一日から昭和三六年九月三〇日までの事業年度の法人税についての更正決定及び相手方が昭和三九年九月五日付でした右更正決定に対する審査決定の各取消しを訴求しているところ、申立人は、相手方が右審査決定に基づく滞納処分並びに昭和四二年度の法人税確定申告に基づく滞納処分として、昭和四三年八月二八日別紙目録記載の債権を差押え、同年九月二五日右債権の公売予告通知をして来たので、これにより生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要がある旨主張し、かつ、疎明して、第一次的申立てとして、右滞納処分(ただし、昭和四二年度法人税の滞納にかかる分を除く。)の手続の続行の停止を求め、第二次的申立てとして、右審査決定の効力の停止を求めた。

二  右申立てに対し相手方から提出された意見についての当裁判所の見解は、次のとおりである。

(一)  賦課処分と滞納処分とは、それぞれ目的を異にする別個独立の処分であつて、先行処分、後行処分の関係にはないところ、申立人が提起している本訴は賦課処分の取消訴訟であるから、第一次的申立ては不適法であるとの意見について。

賦課処分(申告納税方式がとられていても、申告に対してなされる更正は、賦課処分というを妨げない。)は、納税義務の確定を目的とする処分であり、滞納処分は確定した納税義務を強制的に実現させることを目的とする処分であるから、その限りでは、両処分は目的を異にする別個の処分であるということができる。しかし、他面において、滞納処分は賦課処分の執行としての意味を有することを否定できないから、賦課処分の取消訴訟が係属している場合、賦課処分の広義における執行の停止として、滞納処分の手続の続行を停止することは、何等差支えないものというべきである。相手方の意見に従えば、改めて差押処分について取消訴訟を提起しなければならないこととなるが、かかる見解は、行政事件訴訟法第二五条が執行停止の形態のひとつとして手続の続行の停止を認めた趣旨に副わないものである。むしろ、賦課処分の効力及び本件差押処分の効力はそのまま維持し、本件差押処分に基づいて行なわれる爾後の滞納処分の手続の続行のみを停止することにより、保全の目的を必要最少限度に止めるという同条の意図がかなえられるものと考える。

(二)  本件滞納処分によつて申立人が被る損害は、金銭によつて賠償することが可能であるから、本件申立てには緊急の必要性がないとの意見について。

行政事件訴訟法第二五条第二項にいう「回復の困難な損害」とは、処分を受けることによつて被る損害が金銭賠償の不能なものでなくても、社会常識上、回復が困難であると認められる程度のもので足りると解されるから、右の意見は失当である。

三  よつて、当裁判所は、第一次的申立てを理由があるものと認め、行政事件訴訟法第二九条、第二五条、第七条、民事訴訟法第八九条に則り、主文のとおり決定する。

(裁判官 亀井左取 松浦豊久 青木敏行)

(別紙目録省略)

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